G1初騎乗を予定する藤田菜七子騎手

 

着実に腕を磨き続けた紅一点が、ついに大舞台へと姿を現す。

勝ち目のない馬でもとりあえず乗って、大舞台の経験を積む。どんな騎手でもG1初騎乗はそんな境遇に立たされるが、藤田騎手の場合、有力どころの一角に乗ることとなる、異例の出来事。

その裏には競馬会を盛り上げたいという、利得を優先しない粋な計らいが込められていた。

 

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コパノキッキングに藤田菜七子騎手が騎乗予定

2019年2月17日に施行されるG1・フェブラリーステークスに出走予定のコパノキッキングに、現在JRAで唯一の女性騎手である藤田菜七子騎手の騎乗が予定された。

コパノキッキングは前々走のカペラS(G3)、前走根岸S(G3)と重賞2連勝を飾っており、目下4連勝中と勢いに乗る。人気の一角になることは間違いなく、G1初騎乗となる藤田騎手にとっても栄冠を手にする可能性は十分にある。

重賞2連勝中のコパノキッキング

 

女性騎手がG1初騎乗することだけも偉業だが、G1初騎乗でこれだけの有力馬を任されることは珍しい。もし彼女とコパノキッキングが1着でゴールを駆け抜けるようなことになれば、前代未聞の快挙と言っても過言ではない。

 

Dr.コパと藤田菜七子との親密な関係

コパノキッキングは風水で有名なDr.コパこと小林祥晃(さちあき)氏の持ち馬であるが、藤田騎手は彼と親密な関係にある。彼女は小林氏の有力馬に跨ることが多く、勝ち星を量産している。

Dr.コパこと小林祥晃氏

 

数字で見るDr.コパと藤田菜七子の関係

2019年2月3日現在、藤田騎手の馬主別成績は以下の通り。彼女は小林氏の馬で5勝と、他の馬主との勝鞍の差を圧倒している。

藤田菜七子騎手の馬主別成績ベスト10

 

さらに藤田騎手の全成績を参照してみる。

藤田菜七子騎手の全成績

 

勝率だけで見てみれば、彼女の勝率は3.6%であることに対し、小林氏の馬では12.8%と跳ねあがる。連対率、複勝率においても同じ傾向にあるのはご覧の通りだ。また、彼女の全体の平均人気は8.4人気、平均オッズは50倍であることに対し、小林氏の馬では6.1人気、平均オッズは22.3倍と、質の高い馬が集まっていることが窺える。

そして極めつけは以下のデータ。小林氏の持ち馬の騎手別成績だ。

小林祥晃氏の騎手別成績

 

上位には戸崎騎手や福永騎手といったトップジョッキーが顔を揃える中、藤田騎手は2位にランクイン。1位の藤岡康太騎手は7勝、59回の騎乗と、小林氏と親密な関係にあることが窺えるが、彼は2019年で13年目の中堅騎手。藤田騎手が4年目の若手であることを鑑みれば、5勝、39回騎乗という数字は特筆すべきハイペースであることに異論はないだろう。

G1ともなれば、どの馬主もトップジョッキーに騎乗依頼し、少しでも上の着順を目指そうとするものだ。しかし、己の利得云々ではなく、話題の女性騎手と共に競馬会を盛り上げたいという慈善的で粋な計らいが、上記の数字と共に小林氏からひしひしと感じられる。

 

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コパノキッキングのマイル適性は?

そんな小林氏が送り込むコパノキッキングは、同氏の持ち馬の中で賞金ランク2位に付ける。

ドクターコパの持ち馬

 

小林氏所有の現役馬で重賞を勝っているのはコパノキッキングのみ。つまり彼の持ち馬の中ではエースと言ってよい馬で、そんな馬をG1の舞台で藤田騎手に任せるのだから、彼女に活躍してもらいたい強い気持ちが窺える。

そんな自慢のコパノキッキングだが、馬券を買う側としては「マイルへの適応」が気になるところであろう。

関係者の語るコパノキッキングのマイル適性

根岸Sで跨ったマーフィー騎手が1ハロン延長に対してコメントを求められた際「NO」と明言して話題を呼んだが、村山師も「やってみないとわからない。何とかもってくれないか」と距離克服の可能性に関しては明言しなかった。

G1直前の会見に臨む村山師

 

コパノリッキーやテスタマッタを擁して当レースを3勝している陣営は、藤田騎手の偉業達成を後押しする要素であることに間違いない。しかし会見を聞く限り、コパノキッキングの1ハロン延長には懐疑的で慎重な姿勢であったと評価せざるを得ない。

 

フェブラリーSで求められる能力

そもそもダートのマイル戦とは、中央では東京コースにしか存在しない稀有な存在。中央のダート主要コースは1400mや1800mの非根幹距離であり、短距離向きか中距離向きかでくっきりと適性が分かれる。

しかし、この東京マイルというコースは実に特殊で、短距離向きのスピードに加え、中距離向きのスタミナも問われる。

その証拠となるのが、まずはスタミナ面。過去10年、1600m以上戦での勝ち星、及び重賞連対歴の無い馬は、馬券に絡んだことが無い。

スピード面で言うと、このレースは前半のペースが早くなる傾向にある。過去2年、前半の通過タイムは3F34秒台、4F46秒前後と芝レースやダートスプリント戦でお目にかかるような数字が飛び出す。

2017年フェブラリーS通過タイム

2018年フェブラリーS通過タイム

 

この激流に耐えられるスピード能力が無いと、人気馬とはいえ馬群に飲まれる格好となる。

昨年のテイエムジンソクなどは典型的な一例で、マイル経験のなかった当馬は直線であっさりと姿を消した。さらには2012年、連覇をかけて挑んだトランセンド。単勝1倍台の1番人気に支持されたが、6歳となって馬がズブくなったせいか、スタート後にテンの早い馬たちにハナを叩かれ、激流に全く対応できず馬群に沈んだ。

つまり、このレースでカギとなるのは普段はダート中距離路線で活躍していることに加え、過去にマイル以下の距離で4F46秒台の激流の中を好走するようなスピードを示している実績も必要なのだ。

結局コパノキッキングは勝てるのか?

前置きが長くなったが、1600m経験の無いコパノキッキングはデータ的にはかなり苦しい。陣営も距離延長に不安を覗かせており、藤田騎手とコパノキッキングは相当苦しい戦いを強いられることだろう。

インティに楽に逃げられ、中距離馬が台頭するような遅い流れになれば、さらに彼らにとっては苦しくなる。ただしインティの隣にテンの速いサクセスエナジーがいる。この馬の存在が今年もフェブラリーSを激流にさせる予兆であることは、容易に考えられる。

コパノキッキングが勝つには、サクセスエナジーが速い流れを作り、短距離馬が台頭する展開になることがひとつ。さらには距離克服の為に余計なことは考えず末脚勝負に徹することが肝要。ノンコノユメと同じタイミングで追い上げるくらいの思い切った騎乗が求められる。

強い意欲を会見で示した藤田騎手

 

スタートが上手く、女性ならではの当たりの柔らかさを持つ彼女であれば、東京マイルの厳しい条件でも、気難しい面のあるコパノキッキングの末脚を生かす可能性は十二分にある。過去の厳しいデータを乗り越え、歴史を作ってもらいたいと切に願うばかりだ。

 

Dr.コパが抱く藤田菜七子への思い

2018年のG1開幕直前に、小林氏はコパノキッキングで藤田騎手に重賞を取らせたいという思いがあったとのこと。多くの馬主が彼女に重賞を取らせたいと思っているとは小林氏の言葉だが、藤田騎手がこれまで重賞で乗ってきた馬を見てみると、やはり自益を本心とした上辺だけの言葉と言わざるを得ない。

藤田菜七子の重賞成績

 

コパノキッキングに関し、小林氏はカペラSに藤田騎手を乗せる予定であったらしいが、先約があった彼女はブラゾンドゥリスに乗ることになったという。となれば、前哨戦となる根岸Sこそ彼女が乗るはずではと思ったのだが、

マーフィーが「一度、乗せてほしい」って。この日で帰るらしいから「じゃあ、お土産に(日本初)重賞を獲ってもらおう」ってね。基本的に俺は日本人騎手を応援したいんだけど、今回は特別だね。

ギャンブルジャーナル1月26日

 

年始に旋風を巻き起こした英国の若き天才の言葉を優先した小林氏の言動を思うと、藤田騎手で重賞をという思いは単なるリップサービスだったのかと勘繰ってしまう。とはいえ、中央のG1というコパノキッキングにとっても生涯一の大舞台に、藤田騎手にその背中を任せるということは、やはり小林氏の並々ならぬ彼女への思いの象徴なのか。

風水の第一人者の本音は闇に包まれているが、兎にも角にも2019年のG1開幕戦が異様な盛り上がりを示すことは間違いない。

 

 

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