最後方から追い上げる藤田菜七子

 

精一杯の騎乗だった。距離克服が問われる一番で勝つなら、これしかなかった。

決死の大外一気の直線勝負も、前を行く有力馬の背中は遠かった。

もう少し流れていれば。

多くのファンが望む快挙達成に、生きる伝説はそれを簡単に許すはずがなかった。

 

スポンサーリンク

コパノキッキングと藤田菜七子は5着

2019年2月17日、東京競馬場で行われたフェブラリーS(G1)にJRA唯一の女性騎手である藤田菜七子が4番人気コパノキッキングに騎乗した。

結果は上り2位の末脚で追い込みを見せ、5着入線を果たした。

鋭い末脚で追い込むコパノキッキング

 

藤田騎手だけでなく、誰が乗ってもこれが精一杯の結果だったと思う。初の大舞台で周囲に流されることなく末脚勝負に徹することができ、文句のない騎乗だった。

 

スポンサーリンク

藤田菜七子は追い込みに賭けた

戦前から距離延長の克服が勝利の鍵と言われ続けたコパノキッキング。陣営が選んだ作戦は、府中の長い直線にすべてを賭ける追い込みだった。

そんな彼らの意図を藤田騎手は忠実にくみ取り、彼女は好スタートを切ると迷わず行きたがるコパノキッキングを抑え、後方に下げた。そして躊躇うことなく外を回ることを選択し、大外一気の直線勝負に挑んだ。

人馬一体となった藤田騎手とコパノキッキングの末脚は、並走していた戸崎騎手騎乗のサンライズノヴァをあっという間に置き去りにした。長い東京の直線で胸を掬う追い込みを披露し続けた同コンビが追い上げに苦労する中、藤田騎手とコパノキッキングは他馬が止まって見えると形容しても差し支えない末脚を披露。

しかし、最後は生きる伝説の政治力に屈した。

 

スポンサーリンク

コパノキッキングは展開が向かなかった

フェブラリーステークスは、レース前半からペースが速くなることが通例。例年ダートスプリント路線で顔を売ってきた快速自慢が先手を取り、激流を作り出す。

今年、ハナを切ると目されていたのは、1400mの地方交流重賞を2勝している快速馬サクセスエナジー。前走もオープン特別のすばるSを快速飛ばして逃げて3馬身圧勝しており、この馬が速い流れを作って粘り込みを図るだろうというのが大方の予想だった。

しかし、サクセスエナジーと鞍上の松山騎手は控えることを選択した。この馬もコパノキッキングと同様、マイルという距離に不安があった為だと思われる。

2018年皐月賞を制した松山弘平騎手

 

これに恩恵を受けたのが、1番人気に推されていた武豊騎手騎乗のインティ。

「3ハロン35秒くらいでいきたい」とゆったりとした流れで逃げることを理想としていた武豊騎手。インティと彼にとって、快速サクセスエナジーが控えることは願ってもない展開となった。彼らは望んでいた緩やかな流れで逃げ、上りもメンバー中3位の35.4秒を繰り出し、7連勝でG1のタイトルを手にした。

逃げ馬に上がり3位のスパートをかけられては、後ろから行く馬は何も出来ない。距離不安のあるコパノキッキングと藤田菜七子騎手にとっては酷な展開となった。それでも5着まで持ってきた彼女と、それに応えんとするコパノキッキングの末脚に、最大限の称賛を与えたい。

 

武豊騎手への忖度がななこの敗因?

藤田騎手はレース後このように語った。

距離は大丈夫でした。レース中、ハミを噛むところがあったのでもう少しペースが流れて欲しかったです。

2019年2月17日17時28分 ラジオNIKKEI

 

展開が向かなかったことを彼女は悔いた。たしかにもう少し早い流れになっていれば馬券圏内は確実で、もしかしたら戴冠もあったかもしれない。それを予感させるほど、コパノキッキングの末脚は光っていた。

自ら有利な展開を作り出すことが出来ること。この力が藤田騎手にはまだ備わっていなかった。

逆にこの能力を持つのが武豊騎手。これこそ、彼がレジェンドと称される由縁だろう。松山騎手が前を行くインティに競りかけなかったのを見て「忖度」と批判する声もあがっているが、そのような展開を意図的に作り出すのも、武騎手の力なのである。

競走馬に乗って大レースに勝つということは、騎乗技術、若しくは強い馬を集める政治力だけでなく、レース全体を事前に支配する能力も問われるのだ。馬券を買う側としても、そうした政治的な背景も気に止めつつ、予想を組み立てることが求められる。

武豊伝説はまだまだ終わらない?

 

武豊というあまりに大きな存在。彼が事前に松山騎手に対して圧力をかけていたかは厚いベールに包まれているが、彼自身のブランド力が他者に邪魔をさせないオーラを放っていることだけは間違いない。

 

スポンサーリンク

藤田菜七子が学ぶべきこと

藤田騎手がG1で戴冠を果たしたいとするのであれば、騎乗技術だけでなく、ブランド力や政治力といった面にも力を注ぐ必要があるだろう。

インティとコパノキッキングにおける実力差、そして武豊騎手と藤田菜七子騎手との技術差はほぼ無かったと認識している。しかし、大きく水をあけられたのはブランド力の差である。

前述の通り、松山騎手に逃げを打たせなかったのは事前の忖度なのか、武騎手自身のオーラなのかは不明だが、インティ有利の展開に働いたのは武豊という存在の大きさに他ならない。

もし藤田騎手が、松山騎手や同じく先手を打ったサンライズソア騎乗の田辺騎手と相談し、早い流れを作り出せるような展開を作り出せていれば⋯⋯とは恐ろしい想像だが、少なくとも関係者を巻き込んだ根回しが出来ることも、大レースを勝つことで欠かせないことであることに疑いようはない。

彼女には「唯一の女性騎手である」という大きな武器がある。それがJRAの売り上げに大きく貢献していることは紛れもない事実。言葉は悪いが、藤田騎手はJRAの弱みを握っている存在であることは間違いない。彼女が今後も大レースで騎乗して好成績を残したいとするのであれば、女性であるという強味を生かし、競馬会に政治的な影響力を高める営業を続ける必要がある。

菜七子騎手は女性としての強みを活かせるか

 

騎乗技術を磨いて関係者にアピールするだけでは、他の騎手と変わらない。むしろそれでは身体的に劣る男性騎手に勝てるわけがない。

真面目な彼女には酷な話かもしれないが、ずる賢さを身に付けることが今後の彼女の飛躍につながる。

藤田騎手は今回、武豊騎手の持つブランド力という面を学び、今後の糧としていって欲しい。そして次はクラシックなどのG1中のG1で、その姿が見られることを心待ちにしている。

 

唯木絢斗@oaonly180415をフォロー