Naomi Osaka & Sascha Bajin

 

自分の幸せより成功を優先する人間にはなりたくない

この言葉をストレートに受け止めるならば、大坂なおみは現世の正義とされる資本主義社会の原理に逆行していると評価せざるを得ない。

グランドスラム2勝の立役者であるサーシャ・バインという大きな支え。それを自ら手放す行為に、世界の多くの人は疑問を投げかけた。

しかし、それも彼女の生きる道であるといことも、同時に忘れてはならない。

 

大坂なおみが初戦敗退

女子テニスの世界ランク1位で、全米オープン、全豪オープンを連勝した大坂なおみが、2019年2月19日のドバイ選手権2回戦でストレート負けを喫した。相手は世界ランク67位のクリスティナ・ムラデノビッチ(フランス)で、スコアは3-6、3ー6だった。

世界ランク1位となった初戦でジャイアントキリングを許してしまったことに、海外メディアも大きく報道している。

不安視されていたことが、そのまま結果に結び付いた格好だ。サーシャ・バインコーチとのコーチ契約解消後の初戦。硝子のように繊細な大坂選手の精神的支柱だった彼を失った後の一番に、多くの人がその点を憂慮していたことだろう。

その不安をありのままに表現するが如く、大坂選手は世界のメディアから「説明のつかない自滅」と評されるまでのミスを繰り返した。

苛立ちを隠せないドバイ選手権の大坂なおみ

超高速サーブを武器とする彼女だが、ダブルフォルトが5回。そしてサービスエースを決めたのは1回のみ。サーブ成功率は精神安定度に大きく左右されるが、精神的支柱となっていたサーシャコーチの不在は、同時に二つの翼を失ったと評しても過言ではない。

ここでやはり気になることは、なぜ大坂選手はサーシャ・バインと決別したのかということ。二度も頂点に導いていくれた支柱を捨て去るという茨の道を選ばせた彼女の心中は如何なるものか。

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大坂なおみの「成功よりも幸せ」発言

世界のメディアがこぞって大坂選手の決別宣言は「奇行」だと評価する。彼女にそこまでの決断をさせる裏には何があったのか。今一度、大坂選手の「意味深」発言を振り返り、彼女の心中を紐解いてみたい。

 

「自分の幸せより成功を優先する人間にはなりたくないということ。毎朝、練習することや、仲間と一緒にいることを幸せと思えるように。その幸せを犠牲にしたくない」

2019.2.18 zakzak by夕刊フジ

 

「自分の幸せより成功を優先する人間にはなりたくない」

これはつまり「辛い思いをしてまでテニスで勝ちたくない」という思いの表れなのではなかろうか。

大坂なおみが望む幸せとは?

 

大坂選手の類まれな身体能力とプレーセンスは、グランドスラムを2度制するまでの逸材。しかし、その力を引き出すためには、少なからず努力をすることも必要なのは言うまでもない。

その力を引き出したのは、サーシャコーチであることに異論はない。しかし、彼が大坂選手の素質を開花させるために行っていたことは何だったのであろうか。

ここでひとつ疑惑にも似た懸念が頭をよぎる。サーシャ・バインは「鬼コーチ」説である。

 

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サーシャ・バインは鬼コーチなのか

以下、Number Webにて掲載されたスポーツライター吉谷剛氏の記事から、サーシャ・バインのコーチとしての真の姿を読み解く。

 

自分の手で新たな世界女王を育てたいという野心を持った男

 

サーシャは長年、最強女王セリーナ・ウィリアムズ(米国)のヒッティングパートナーを務めてきた。10代から活躍し、30歳を過ぎても強さを増したセリーナを支えたのはその練習量の多さにある。

 

「すべては練習からなんだ。試合で安定したプレーを生み出すための心構えが大事で、なおみとも常に話し合っている」

 

上記にて紹介させて頂いた3文。これから察するに、サーシャ・バインというコーチは大変熱い心を持っていることは勿論だが、一方で野心家であり、練習の鬼であるという面が浮かび上がってはこないだろうか。

サーシャ・バインからは、何か昭和の日本スポーツ界を匂わせる。今となっては批判の的となる彼の行動だが、それを頭ごなしに否定するわけにもいかない。彼には大坂選手の他に、セリーナ・ウィリアムズやビクトリア・アザレンカをサポートした経歴もあり、世界のテニス業界でその手腕を知らぬ者はいないとされる程の存在。

熱い漢、サーシャ・バイン

 

サーシャはハードトレーニングを課すという側面はあるものの、それは勝つ為に熟考され尽くした綿密なプラン。つまり研究熱心な合理主義的鬼コーチと彼を形容できるのはと思うのである。

勝ちたいと強く願う選手にとって、サーシャという男の存在は実に有難いものだ。しかし「自分の幸せより成功を⋯⋯」と自身の価値観を語る大坂選手にとって、サーシャの野心は受け入れ難いものだったのではなかろうか。

 

大坂なおみの生きる道

何度も引用して申し訳ないが、大坂選手の口から吐露された「自分の幸せより成功を⋯⋯」というこの言葉。資本主義が正義とされる現代社会では、こうした彼女の言葉に対し「もったいない」と言葉にする御仁方も多くいることだろう。

全豪オープンを制して蹲るなおみの心中は?

 

しかし多くを求め過ぎない生き方もまた評価されて然りなのではと、本著では強く主張したい。

「毎朝、練習することや、仲間と一緒にいることを幸せと思えるように。その幸せを犠牲にしたくない」とさらに言葉を紡ぐ大坂選だが、これは「何気ない日常を幸せに感じられればそれでいいのに」という思いの表れに他ならない。

彼女がそういた価値観を保持し続けるのであれば、恐らく今後はグランドスラムを制するようなことはなかろう。以下の記事でも言及したが、彼女が全仏と全英を制し、生涯グランドスラムを達成するようなことは夢のまた夢と言わざるを得ない。

 

 

スター街道を突き進むことを望む日本人にとっては悲しいことかもしれないが、大坂選手の「求め過ぎない」価値観を理解し、彼女を人種的な目線における類の話だけなく、考え方の面における多様性も、多くの人々が理解することを望む。

 

※追伸
大坂なおみ選手のような価値観を持った少年を描いた小説を、恥ずかしながら執筆させて頂いている。彼女の「求め過ぎない」価値観に共感できる人であれば、きっと得られるものも多いだろうと、僭越ながらご提案したい次第。

 

 

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