鈴木大地スポーツ庁長官

 

大学スポーツ界の発展を願う長官の言葉は、実に輝かしい未来を感じる。

しかし、その裏に潜む闇もまた、彼の言動から読み取れてならない。

 

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鈴木大地長官がUNIVASについて言及

ソウルオリンピック金メダリストで、スポーツ庁の鈴木大地長官が、3月2日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系)にゲスト出演し、3月1日に設立された大学スポーツ協会「UNIVAS」について言及した。

鈴木長官が最も注力しているものの一つが大学スポーツである。箱根駅伝や東京六大学野球など一部を除けば、その他の競技イベントの知名度は高いと言えない。そこでスポーツ庁は、全国約800校の部活動をまとめる大学スポーツ協会「UNIVAS」を設立。競技力の向上だけでなく、暴力・ハラスメント対策、試合の映像配信サービス、新しい大学対抗戦の設立など、環境整備を推し進めていくという。

そのUNIVASが見本にしたのが、アメリカ大学スポーツを統括する全米大学体育協会「NCAA」である。NCAAが主導する主なイベントに大学アメリカンフットボールの試合があり、10万人のスタジアムを埋め、放映権料などの年間収益は約1000億円を誇る。これはJリーグ営業収益とほぼ同じ規模だ。

これらの収益は各大学に還元され、環境強化が行われている。つまり、イベントによる収益によって選手たちの活動費が賄われ、選手自らが部費を負担することなく、活動に専念できる。

 

UNIVASで大学スポーツ界はどう変わる?

鈴木長官は番組で以下のような点も指摘。

 

「大学野球の早慶戦はチケットの取りづらい人気コンテンツとなっているが、入場料は500円と安く、その一方で『3000円でも見に来る』という人は大勢いる」

テレビドガッチ 2019/3/3

 

学生スポーツもビジネスとして成り立ち、それで得たポケットマネーを各大学の懐にしまうのではなく、選手たちの環境や新しいスポーツ環境への投資へつなげる仕組みが必要と、鈴木長官は説いた。

 

また彼は、昨今問題になっている指導者によるパワハラの根絶に対しても、UNIVASは大きな役割を担うことを語る。

 

「かつて暴力を振るわれて育ってきた指導者が、自分がやられていたことを同じようにしてしまうという連鎖になっているので、それを断ち切るいい機会。研修会などで最新のコーチングを学んでもらえるようにしたい」

テレビドガッチ 2019/3/3

 

ここまで聞くと、大学スポーツ界が健全な道を歩む誰もがハッピーな仕組みが出来上がるように思えるが、一概にそうは言えない事情も含まれているようだ。

 

UNIVASに筑波大などが不参加

番組ではUNIVASの模範となる筑波大学蹴球部の取り組みを例に挙げ、GPS測定器を使った戦術の組み立て方法などを紹介したが、当の筑波大はUNIVASに不参加する模様。

その事情について、米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店「ドーム」で社長を務める安田秀一氏が以下サイトで語っている。

 

学生のメリット見えない 大学スポーツ統括組織の謎

 

安田氏はUNIVASについて、以下の問題点を挙げた。

借金だらけの税金が投入

本場米国のNCAAは、様々な活動を通じて巨額の税金を納めているが、逆にUNIVASには借金だらけの日本の税金が投入されることを指摘。UNIVASは大学スポーツイベントで得た収益を選手たちの活動に回す意図があることは前述したが、実際、その分配先が不透明であるという。

学生スポーツは任意団体

中学、高校を含む日本の運動部の存在が「課外活動」であり、学校とは何ら関係のない任意団体である。主な活動費は各家庭の家計から賄われる部費である。任意団体なので組織として銀行口座も作れず、部費は監督の個人口座で管理され、そのお金は口座名義の個人の所有物となる。

つまり、その「課外活動」であるという認識を取っ払わない限り、UNIVASを創設しようとも学生スポーツ界は変わらないと同氏は主張する。

筑波大がUNIVASの存在を疑問視

筑波大学は学長が先頭に立って、運動部を正規の活動とする取り組みを進めている唯一の大学だと、安田氏は語る。その筑波大がUNIVASへの存在に疑問視し、参加を拒否していることは、UNIVASが目指すべきものとまったく違う方向に向かっていることを証明しているのではなかろうか。

鈴木大地長官も表向きにはメリットを多く語るが、彼もまた、封建社会に潜む闇を隠すためのベールに使われていることを、同氏の指摘が示唆して思えてならない。

 

課外活動の域を抜けるべき

大学の箱根駅伝や六大学野球に限らず、甲子園や高校サッカーなど、学生スポーツは興行として成り立ち得る宝の山だ。今年の高校サッカー選手権決勝は、5万4千人というプロでも集められるかどうかの大観衆を集めるくらい、熱狂的なイベントとなった。

 

 

「学生=アマチュア」という概念を取っ払ってはどうかと強く思う次第。学生たちが日々の練習で見せたパフォーマンスで得た収益、それを自分たちの活動に回すことが出来れば、何よりも合理的であるし、学生たちも自分たちで稼いだ金で活動しているというプロ意識も生まれる。

根本的に「スポーツが課外活動」であるという意識が、学生スポーツ、ひいては日本のスポーツ界の発展を阻んでいる気がしてならない。勉強していい大学に入ることが共通の美徳と化している日本の教育を見直さなければ、学生スポーツ会に未来はない。

各々の個性が活きる未来を描けなければ、スポーツ界はおろか、国としての存続が危ういことを、声高に叫びたい。

 

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